完成度80%の空間
建設中の現場を通りがかると心が踊る
混沌とした状態の中、
そこには見えない未来に対するヒントが散らばっていて、
ぼくらはいろんな未来を頭の中に巡らすことができる
実はこの混沌こそが未来への推進力であり、創造の源泉ではないか
しかし、建物が完成してしまうと、往々にしてその躍動感は失われる
直前まで空間が持っていた未来への推進力や創造の源泉は失われて
空間の持ち主に引き渡される
完成した状態を100%として、
できるだけその状態を長く保つよう退屈に使われるだけだ
残念なことに、これが一般的な空間づくりの姿だ
なぜこんなことが起こるのか?
それは一般に「完成度は高いほどよいものである」という常識が存在するからだ
そこに深い思想や洞察はなく、誰にでも容易に批判できる基準であるがゆえに、
それに拘ることはむしろ空間の本質から遠のく結果を生み出してしまうにもかかわらず、
常識化してしまっている
ぼくらからすれば、「完成度」の偏重は切実なる「社会悪」の一つだ
ぼくらGRIDFRAMEがつくる空間とは人々を乗せて未来へと運ぶ船だと思っている
だから空間は未来へと動いていく乗り物であり道具・機械である
つまり、未来への推進力や創造の源泉としてのエンジンを積んでいなければならない
完成度100%というものがあるとすれば、いわばエンジンを捨てることに等しい
未完成であるからこそ、未来に向かって前進できるからである
空間とは、
部分的に変形したり、傷ついたり、朽ちたりしながら、
ひたすら人々が好きなように動き回れる強度を持たねばならない
「完成度80%」をぼくらは理想とする
竣工間近の完成度80%の空間はいつも魅力的で、
空間の本質をすでに体現できている
完成度がこれ以上高まれば、本質はむしろ失われていく
ぼくらは完成度をそれ以上上げることなく、
空間を使用する人々へ引き渡すことに細心の注意を払いたい
なぜなら、空間を使用する人々こそ、
空間を未来へと動かして変化させていく担い手だからだ
かれらが完成度80%に身を任せ、残りの20%に一対一で向き合い、
空間を自由に変化させていく
それが永遠に続いていくことをぼくらは望んでいる
むろん、「創造性の連鎖」とSOTOCHIKUもそれを実現するためにある